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第16章 学校全体で取り組む

PE16
第16章 学校全体で取り組む
Whole School Approach

 ここまでの章で、わたしたちは、先生とそれぞれの教室が平和の文化を築くことに貢献できることを議論してきました。ここでは、その取り組みを平和的な学校がどのように支援できるかに注目していきたいと思います。

 平和の考え、視野と価値観を学校全体の生活あるいはその先にまで、もっと効果的に取り入れていくためには、「学校全体によるアプローチ」を採用することを提案します。学校全体で取り組むということは、すべての学習領域、すべての学校共同体のメンバー(生徒、管理職、教職員)が、そして、その人たちがかかわるより広い範囲の人びとを巻き込むように努力します。この取り組みは、教授法、生徒活動、運営方針、学校制度や関係性など、その他の学校生活の側面だけでなく、学校を取り巻く地域社会のための、そしてとともに取り組む社会活動を含みます。

学校全体で取り組むということは、とても重要です。なぜならば、首尾一貫した平和のメッセージや価値観が、学校や共同体の生活のそこここに表れているならば、それは、平和教育そのものの学習を活性化し、強化するからです。学校における社会的政治的経済的文脈は、学校のビジョンやミッションに対して支持的ではないかもしれません。しかし、それこそが、まさしく、平和的な学校が問題にしなければならないことなのです。平和的な学校は「カウンターカルチャー」「対抗文化」として、支配的なパラダイムに対峙するものであり、必要な変革に取り組み活性化させることを引き受ける必要があるのです。確かに、これは長期的で骨の折れるプロセスでありますが、取り組む必要のあることなのです。

フィリピンの学校がどのように学校全体での取り組みを行っているかを描写させてください。図16.1は、ミリアム大学が方針を示すために使っているものです。1926年にメリーノール・シスターによって始められたミリアム大学は、いまや幼稚園から大学院までの生徒を擁する、素人が経営している学問の府です。


ミリアム大学における平和教育
ミリアム大学のビジョン・ミッション声明文は、「正義にもとずく平和のために働き、人類の一体感に貢献していく人材」を開発するためということを表明しています。この学校のVMSは、目標に切り込むために平和教育を取り入れました。学校のモットーは「ミリアムは、平和と正義と環境のために」です。これはこの本の最初に述べている平和の包括的な定義を表しています。VMSはモットーは、学校の哲学を反映しているのです。それは愛の原則にしっかりと碇をおろし、それは正義へと想像力を開き、それはさらに平和に導いていくのです。この哲学は、人間の尊厳と母なる地球へのケアの尊重という原則に根付いたものでもあるのです。

 1991年に、ガッコゥキョゥドゥタィは、「ヘィをのゾーン」にな。ことを宣言しました。「平和のゾーン宣言」は、共同体は互いをケアする関係、協力、非暴力的な対立の解決、シンプルなライフスタイルや平和や社会的な関心のための活動を促進します。

 ミリアム大学は、平和教育をもっと効果的に推進するためには、「学校全体の取り組み」を進めることであると、思っています。この、学校全体のアプローチは、機構的には三つの分野を含みます。組織のビジョン・ミッション・目標、教育内容と教育のプロセスや学校体験、表面的やヒドン、組織の中で動いている構造と関係性。

ミリアム大学は、学校生活のさまざまな分野で平和教育を推進することで繁栄してきました。

平和的なカリキュラムに向けた努力
・平和の視点とテーマがカリキュラム全体に統合されている。
・特別な平和に焦点化したカリキュラムとテキストが第7年生の社会科の教科に使われている。
・3単限の大学レベルのコース「平和研究入門」が、国際研究学部の必須主要コースとして、そして他学部の学生にとっては選択科目として提供されている。同様に、「平和、ジェンダー平等と環境のための教育」というコースは、教育学部の必修主要コースである。
・平和研究の副専攻が学部生にも選択可能である。
・1単位のコース、MC101と呼ばれるものが、学校で、平和、社会正義、ジェンダー平等、環境配慮などが、すべての学部生や大学院生によって実践されている。
・非暴力的な対立の解決のためのセッションが、標準的な高校、短大、成人教育のプログラムとして提供されている。

教授学習方法
・先生たち、特に上述のコースにたずさわる先生たちは、協同的で、参加的、対話的、経験主義的な方法を使おうと努力しています。これらの方法は協同主義的学習アプローチ、省察と共有、想像力を刺激する演習、シミュレーションやロールプレイをした後でのふりかえり、映画あるいは記録映画をみてからの議論、外部の人へのインタビュー、対立の解決演習、物語りや音楽の活用を含みます。

コ・カリキュラムと学生の活動
・学級外生徒活動は、平和の学習と実践になっている。パックス・クリスティ学生組織は、違った方法でこれらの活動をいきいきさせるのを助けました。これらで使われた平和の意識を高めるために使われた活動は、国際平和でー(9月21日)に実施された展示、「このクリスマスには戦争玩具は贈らない」というテーマでのポスター制作、平和のキルトと横断幕、野外展示「平和のためのPinwheels」、「宗教の間の平和のビジョン」および「銃による暴力と対決する」についてのミニワークショップ、平和を焦点にしたliturgical, para-liturgicalサービス、歌祭り、ステージでの発表など。後者には大学生による「希望の種」と子ども研究センターの価値観を伝える年次劇の発表がある。
・ほとんどの学生がカソリックであるミリアム大学と、ムスリムの人が通うミンダナオの学校との姉妹提携は、双方の学生が互いを知り合い、何十年も積み重なった偏見のバリヤーをつきくずすものであった。プロジェクトのテーマは「平和の橋をかけよう」で、2004年に始まった。活動に含まれるのは次のようなものである。手紙のやりとり、先生と生徒が参加する平和教育のトレーニング、新聞の協同発行と協力。ラジャ・ムダ高校がミリアムの学生に対してプレゼンテーションを行い、そのおかげで、大学生たちがミンダナオにおける対立の状況についての理解を深めることに役立った。そして、ミリアムの生徒、保護者、教職員は、彼らの活動を物質的に支えた。

平和に関連する教材とその他の素材
・平和と非暴力についての本、その他の素材が、大学図書館に特別なセクションを占めている。そのためにこれらのコレクションに対して教職員も学生もアクセスしやすい。
・学校の出版物に平和と非暴力に関連したものがある。
・平和に焦点をあてた本、例えば「Tungo S Isang Mapayapang Mundo平和的な世界に向けて」「対立の解決とピアメディエーション・ソースブック」などが、平和をテーマにした研究報告とともに出版されている。
・学校に「平和庭園」がある。大学のミニ森林公園にあり、平和についての理解を深められるようになっている。庭園は、平和のことわざを集め、それを自然岩の上におかれたプレートに書き付けている。イエス、アッシシの聖フランチェスコ、マハトマ・ガンジー、マザー・テレサなど。庭園には平和のポールもあり、国際的な平和のシンボルであり、世界に10万本、広がっている。

管理職と教職員のための強化活動
・平和教育、平和の精神、対立の解決、暴力への代替についてのセミナーや講演会が持たれてきた。
・学年の始まりの前に、平和教育についてのワークシッョプが、新任の教職員に対して実施されてきている。その他の職員に対しては短いオリエンテーションが実施される。
・平和のためのコアグループを、さまざまな部署からの代表で構成し、彼らがそれぞれの部署でのカタリストになれるように配慮する。彼らは、学外での成長の機会のために派遣される。例えばミンダナオ平和構築機構など。

参加型の構造および相互ケア関係
・学校はさまざまな機能を学校で発揮する際に、民主的なプロセスをとる。これらは、さまざまな目的の委員会へ各部署、学生、管理職からの代表を入れる。委員会は、方針を決定するものであり、他の人々から権限を委託されている。
・参加は、学校のリーダーの選択にも奨励される。共同体のメンバーは、誰であれ、管理職、スーパーバイザー、そして、理事会メンバーすら選ぶ。リーダーに立候補したい人は、それを表明することができる。
・対立が起こった場合は、対立を解決するための民主的なプロセスがある。(教員-学生調停委員会、苦情処理委員会など)
・コミュニティ感覚を育てるための機会を提供する。特別な日をお祝いしたり、コミュニティのふりかえりのセッションを学校の名称がかわったりなどの機会に提供する、開放性、協力、相互認知を奨励する。

社会的関心のための平和行動/活動
・平和構築は、物理的構造的暴力の否定だけではなく、暴力の被害者に、結果的にはなってしまいがちな弱者や貧しい人をエンパワーしたり、など、積極的な活動も実践している。そのために、大学は、外部の組織に協力しつつ、彼らの自立を促進するための活動を行う。ミリアム主導のリーチアウト・プログラムには、次のようなボランティアとして関わることができる。
a.非識字成人と学校にいっていない若者対象の学際的で職業的なプログラム。
b.公立学校の子どもたちに対するcathechetical ministry
c.貧困状況にある母子のための教育セッション
d.障害のある人に対する強化セッション(マリーノール・シスターとの協力で実施)
e.ミリアム・ボランティアのミッション・プログラムを海外、例えばタイやビルマの国境地帯で実施。
・学校コミュニティのメンバーは、Institutional Network for Social Actionとthe Kilusan ng Miriam sa Kalamidad (Miriam’s Movement to help calamity victims).を通じてボランティアに参加することを奨励される。
・彼らは、同時に、他の平和活動に参加することも奨励される。手紙を書く(例えば、メディアの暴力に対して)、デモに参加したり、ロビィングしたり、(例えば、平和のプロセスと停戦を支援する、死刑制度の廃止を訴える、銃規制の法律の制定を求める、銃のレプリカの製造と販売を禁止することを求める、など)、そして権威に対してポジションペーパーや請願を出す(日本の憲法9条のretention堅持を求める、国家公務員の汚職をなくす、など。)

これらのことは、学校が、学校全体で取り組むためにどのような一歩を踏み出すことができるかを描写するものです。組織として、そして制度として、このような活動を支援することは、学校全体で取り組むために必須ですし、リーダーシップをとる人、協力する人の熱意は必要不可欠なものです。この取り組みのためにさまざまな準備と時間をかける必要があるでしょう。しかし、それに見合うだけの得られるものがあるのです。つまり、学校の文化が、平和的であるだけでなく、学校を含む社会全体で求められている変革を促進するような学校文化を促進するものでもあるのです。
by PE2012 | 2013-03-21 08:56


平和教育推進キャンペーンの一環で作成されたテキストを翻訳し、広げるプロジェクト。みんなの力で平和への道を拓きましょう。


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